ポート噴射と直噴エンジンの違いについて
■ 違いとは

@ ポートエンジンとは
ポート噴射エンジン ポート噴射式は英語では”Port Fuel Injection”と言うので、
PFIと略されることもある。吸気管内噴射ともいう。
吸気バルブ直前の吸気ポートで燃料を噴射するため
ポート噴射式と呼ばれています。

● メリット
シリンダー直前の吸気ポートで燃料を噴射することによって空気と燃料が良く混ざりやすいため、
濃度が均一な混合気となり燃焼によって燃え残りの混合気が出にくく、燃焼効率が良いと言われている。
この均一に混ざり合った混合気を使った燃焼のことを「均質燃焼」と言う。
マニホールド〜吸気バルブ間に堆積したカーボンを、噴射された燃料が洗い流し、混合気と一緒に吸い込み燃焼させ、
吸気バルブ周辺の洗浄も期待できる。

● デメリット
吸気管に付着する分の燃料が遅れてシリンダーに入ってきたり、
いつ気化するかは外気温やエンジンの加熱状態に依存している事から、
精密な制御が困難でレスポンスが悪い。混ぜるのは得意だが緻密にコントロールできないのがポートインジェクションである。

A 直噴エンジンとは
直噴エンジン 英語では”Direct Injection”というのでDIとも言われている。
筒内の文字通り、シリンダーの中にインジェクターがあり、
直接的に圧縮空気に燃料を噴射するため、直噴と呼ばれている。
空気だけをシリンダ内に吸入し燃料は直接シリンダ内に噴射する。
1990年代に、ガソリンエンジンに直噴モデルが登場した。
当初は燃費を良くするために、
空気に混ぜるガソリンをできるだけ薄くする「リーンバーン」が主流。
理論空燃比、ストイキ燃焼は14.7:1に対し、20:1〜55:1の空燃比。
現在は、ストイキ燃焼による直噴が主流になっている。

● メリット
点火プラグ周辺に燃料濃度の高い混合気を持ってくることで少ない燃料で燃焼を行うことができる。(成層燃焼)
希薄燃焼を可能する事ができた。これらが燃費向上に貢献した。
ストイキ燃焼の場合、噴射後のガソリンが気化熱を吸収することで、シリンダ内の温度がポート噴射に比べて下がる。
この事から、充鎮効率(酸素濃度)が向上し高出力を得られる事から全回転域でのトルクを高められ
高効率となり、出力向上と低燃費の両立を実現させることができる。
また、過給機を使うことで、大排気量の自然吸気エンジンと同等の動力性能を確保することができる。
排気量が増えるとエンジンサイズは大きくなり重くなりますが、直噴エンジンと過給機の組み合わせは車の軽量化にもなる。
圧縮空気に直接燃料を噴射するので、高圧なインジェクターが必要でコストがかかるが、
噴射される燃料は細かくなるため、同じ燃料の量あたりの表面積は増えることになり、燃焼しやすくなる
事から、ノッキング(異常燃焼)を防止し、充鎮効率(酸素濃度)が向上し高出力を得られる。

● デメリット
成層燃焼はリーンバーンであるから、NOxが劇的が増加してしまう。
このため、NOx吸蔵還元型の触媒が必要になりコストが増加する。
燃料を薄くすると正しく着火しない場合があり、燃焼がくすぶり「すす」が発生する。
その煤がインジェクターノズルに付着すると適正な燃料噴射ができなくなることがある。
以上の事から、現在の直噴エンジンはストイキ燃焼が主流となっている。
直噴エンジンの吸気バルブは空気しか通らない為、オーバーラップによる吹き返しなどで
マニホールド〜吸気バルブ間に堆積したカーボンを燃料添加剤やハイオクガソリンで
謳われる吸気マニホールド〜バルブ間の洗浄作用も、期待する事はできない。
そのため、吸気系にカーボンがより堆積し易く、渦流生成用バルブにカーボンが付着して
バルブが故障し、必要な渦流が発生しないため燃料がうまく空気と混合せず異常燃焼を
起こしたり、点火プラグが燻るなどしてエンジン不調に陥る事例もある。


ちなみに、ディーゼルエンジンの噴射圧力が高圧化される理由は

・燃料を最後まで完全に燃やすために燃料噴霧の粒径を小させたいが、粒径を小さくすると噴霧が十分遠くまで飛ばない
・完全に燃焼させるためには十分な空気が必要であるから噴霧は十分遠くまで飛ばしたい
上記の2点である。
ディーゼルエンジンは現在では直噴が当たり前であるが、予燃焼室式とか渦流室式があった。

余談ですが、
副室式ディーゼルエンジンは燃焼室内の噴射された燃料が直接触れる位置にグロープラグが装着されている。
燃焼室の表面積が小さく、壁面への熱損失の少ない直噴式ディーゼルエンジンではグロープラグは使われず、
インテークマニホールド直前の吸気通路に、吸気を直接暖めるインテークヒーターを設置する場合がほとんどである