昔はエンジンをかけるだけでも命がけだった!?

■ エンジンをかけるだけで骨折していた?

解説

ガソリン4サイクルエンジンをかけるためには、ピストンを下げ吸気した後、
ピストンを上げ圧縮し点火プラグにより着火させるという過程が必要である。
現在は、スタータにより強制的にピストンを動かすと同時にバッテリの電気により点火プラグの着火をさせるという工程である。
では、スタータ(セル)が開発される前はどうだったのでしょうか?
吸入の段階でピストンを下げるためのクランクシャフト回転を得るために、
その最初の回転を、直接クランクシャフトにクランク棒を差して手動でを回転させていたのとの事です。
回すのにテクニックが必要で、タイミングを間違えると棒が逆回転(ケッチン)し骨折したり最悪の場合、死んでしまう事も

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大型トラックやブルドーザー等の大きなエンジンはクランク棒を使用して手動により回す事が不可能であったため、
まず小さなガソリンエンジンを掛け、それを基にしてスタータとして主エンジンを始動する仕組みになっていたとの事です。

ちなみに、
クランク棒を回すのは、運転助手の仕事であり、運転手はアクセルとチョークを操作していたとの事で
クランク棒を回すためには両手を使う必要があり、体力とコツが必要である事から運転助手に女性はいなかったとの事です。

また、
骨折の一種に「ショーファー骨折」別名「運転手骨折」というものがあります。
これは、橈骨茎状突起といって親指の下の方、手首に骨のでっぱっている部分が折れる骨折の事で、
交通事故では、運転手がハンドルを握った状態で上記の部分を骨折する事が多い事及び
バックファイヤを起こすとクランクが逆回転して手首に当たって橈骨茎状突起が折れた事からこの名前がついている。
この事からも、エンジンをかける事が命がけであった事がよくわかりますね。

この命がけの作業をなくしたのが、ガソリン車の「キャデラック モデル サーティ」(1912年)で
セルスターターを世界で初めて採用した自動車である。

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最後に、クランキングする時に必要だった
厚手の皮手袋を収納する箱が「グローブボックス」と呼ばれ、
今日のグローブボックスはこれが起源と言われています。

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