損害賠償金等の相続について

■ 交通事故に遭った場合、加害者に請求できるものとは?

● 誰が請求するのか?
原則としては、交通事故によって被害を受けた被害者本人から損害賠償を請求しますが、
下記の場合は被害者本人に代わって請求する。

@ 被害者が未成年者の場合は、親権者である親が法定代理人として請求。
A 被害者本人が成年でも、遷延性意識障害(植物状態)や高次脳機能障害などにより、
  判断能力が十分でない場合には、成年後見人などが請求。

交通事故によって被害者が亡くなられた場合、 被害者の相続人が損害賠償の請求をすることになる。
この場合、相続人には、

@ 被害者本人に対する慰謝料
A 固有の慰謝料

上記の2種類を請求する権利が認められている。

● 積極損害
交通事故による怪我で病院の治療を受けたり入院をした際や、
交通事故が原因で出費を余儀なくされた場合に発生した損害の事で、具体的には下記の項目になる。

・診察費用、治療費用
交通事故の怪我による治療等で、健康保険が使えないという事をよく聞きます。
確かに、下記の場合は健康保険の場合、給付対象にならない。
1:業務上の災害(これは労災で保障される)
2:法令違反による負傷(酒酔い運転などの結果負った怪我。自業自得である)
3:第三者の行為による負傷(事件や事故で自分以外の誰がに傷つけられた場合)第三者が賠償をする。
交通事故の場合、3番目のケースに該当し基本的には健康保険が使えないという理論が通る訳です。
しかし、自分の加入している公的医療保険に“第三者行為による傷病届”という
申請書類を提出して手続きをすれば、健康保険は使えるのです。
また、1968年10月に厚生省(現・厚生労働省)が出した課長通知には、
「自動車による保険事故も一般の保険事故と何ら変りがなく、保険給付の対象となるものであるので、
この点について誤解のないよう住民、医療機関等に周知を図るとともに、
保険者が被保険者に対して十分理解させるように指導されたい」と明記されている
(昭和43年10月12日?保険発第106号
「健康保険及び国民健康保険の自動車損害賠償責任保険等に対する求償事務の取扱いについて」)。
上記の点からも、交通事故の場合でも健康保険が使える事は明白です。
しかも、次のケースの場合健康保険を使った方が自己負担が軽減する。
被害者にも20%の過失があると見なされると、
医療費が100万円かかった場合は相手方の損保会社からは80万円しか補償されず、
20万円は被害者側の負担になる。
これが、健康保険を利用すると医療機関の窓口では3割の30万円を支払うが、
その80%の24万円は加害者から賠償されるので、被害者側の負担は6万円で良い事になる。

・リハビリ費用

・手術、入院費用

・付添、介護看護料
通院や入院をする場合で誰かに付添をしてもらわなければならないというケースで
この場合の付添看護費は、認められている。
この付添看護費は、看護をした人自身の損害ではなく、看護を受けた被害者自身の損害となる。
後遺障害事故の場合では、症状固定後の将来の付添看護費が積極損害として認められる場合もある。
近親者の入院付添
1日5,000円〜6,500円(自賠責保険基準:1日4,000円)
近親者の通院付添
1日3,000円〜4,000円(自賠責保険基準:1日2,000円)

・通院、通勤交通費
一般的には、電車やバスのような公共交通機関での通院が相当な交通手段となり、
タクシーの利用は不相当とされている。
ただし、タクシーを利用しないと病院に通院できないような場所に居住している人や、
程度によっては、電車やバスでの通院が難しいという場合においてはタクシー利用が相当と認められる事も。
○ 駅まで徒歩1時間の距離にある被害者が、病院への通院にタクシーを利用した事例
タクシー代計約235万円が損害として認められた。(大阪地判平成7年3月22日)。
○ 事故のため、対人恐怖症や外出困難の精神症状がある女性が、通院のためタクシーを利用した事例
タクシー代計約22万円が損害として認められた。(神戸地判平成13年12月14日)

・入院雑費等
認められている範囲や金額は限られており、通常は個室の差額ベッド代(差額室料)は請求できません。
日用品・雑貨・・・寝具、パジャマ、下着、洗面具、歯ブラシ、タオル、食器等
通信費・・・・・・入院中の家族、友人、仕事での電話代、手紙代等
文化費・・・・・・ 新聞、雑誌、テレビ・ラジオの賃借料等
栄養補給費・・・・ 牛乳、ヨーグルト、バター、果物等
家族交通費・・・・ 家族が身の回りの世話をする際の交通費
自賠責基準では、原則1日1,100円ですが、裁判になった場合は1日1,500円認められる事が多い。
また、実際にかかった費用が日額1,500円以下だったとしても、1,500円の請求が認められることも

・葬儀費用
交通事故に遭わなくても人間はいずれ死ぬため、 死亡すれば葬儀を行うのが通例であるから、
交通事故の加害者が葬儀費用を負担すべきではないと考えるが、
一般的な感情や慰謝料的な意味合いで、加害者が葬儀費用を負担することになっている。
◇ 病院からの死体運搬費
◇ 火葬費・葬儀屋に支払った費用
◇ お布施、戒名、読経料
◇ 墓石代・墓地費用
◇ 初七日、四十九日などの読経料
墓石や墓地の費用については、交通事故に関係なく将来その一家の子孫も利用するため、
それを事故の加害者が負担するのは適当ではないという判例もある。
ただし、墓石や墓地費用の全てが認められるわけではなく、
被害者の年齢や家族構成、社会的地位などを考慮して常識的な金額となる。
数百万、数千万円が認められることはありえない。
弁護士基準の130〜170万円の範囲で定額化が図られている。

・車や家の改造や改装費

● 医者の指示がある場合に認められる積極損害
・針灸、マッサージ、あんま費用
整骨院 柔道整復師の施術で保険適用となるもの
電気療法・手技療法・温熱療法・運動・ストレッチ・その他
保険適用外となるもの
鍼灸・*医師の同意書がなければ保険適用外になる事も
後遺症の患部以外の施術・その他

・眼鏡や杖の購入費

・義足、車椅子など治療器具の購入費

・形成治療費

・専門職の付添人(免許を所有する者)実費全額※食費も含む

●精神的損害
交通事故に遭い、受傷すれば精神的な苦痛を被る事になる。
この精神的な苦痛を金銭的に換算し「損害」として扱うものを精神的損害といい
精神的損害の賠償金のことを「慰謝料」という。
この慰謝料には「入通院慰謝料」・「後遺障害慰謝料」・「死亡慰謝料」の3つがある。
即死においては、精神的苦痛を被っているのかという議論になるかもしれませんが、
即死を含めた死亡事故についても、慰謝料は生じると考えてよいと思います。
入通院の慰謝料については、下記の方法で算定しています。
@:治療期間(入院期間+通院期間)
A:実通院日数(入院期間+実通院日数)×2
この2つの計算式を比べて日数が少ない方を採用し、4,200円をかけて計算します。
例えば、入院30日間で通院期間が90日間(実通院日数は60日間)の場合
@ 治療期間  30+90=120日間×4200円=504,000-
A 実通院日数 30+60=90日間×2=180日×4200円=756,000-
上記の例ではAが適用される事になる。
2倍の慰謝料が算定されるのは、整形外科に通院した場合と接骨院に通院した場合であり
鍼灸院や整体院では、実治療日数のみしか算定されません。
これは、仕事等でなかなか通院できない方もいれば毎日のように通院している方で慰謝料が変わる事を
考慮しているため、このような算定方法になっています。(自賠責基準)
また、骨折のような怪我の場合、固定するのみで頻繁に通院する必要はなく、
通院日数のみで慰謝料が算定されてしまえば
骨折という重傷にもか関わらず十分な慰謝料が受け取れなくなる事からも上記の算定方法をとっています。

● 消極損害
交通事故の被害者にならなければ得ることができた利益の損害です。
・休業損害
交通事故に遭い入院や通院で仕事を休んだ場合、その期間の収入や利益が現象する事になる。
この仕事を休業した期間の補償を目的としたものを休業損害と言う。
自賠責基準では、休業損害 = 5700円 × 休業日数で算定される。
基礎収入額が5700円を超えると認められる場合には、その実額を1日当たりの基礎収入額とする場合がある。
片腕や片足を切断したり、後遺障害となったために労働能力が減少し、
交通事故に遭わなければ本来もらえたであろう将来の収入の減少をきたす損害の事。
「後遺障害による逸失利益」と「死亡事故による逸失利益」の2種類がある。

・逸失利益

「後遺障害による逸失利益」と「死亡事故による逸失利益」の2種類がある。