リスホメオスタシス理論と交通事故

   ■ ABSとは
アンチロック・ブレーキ・システム(Antilock Brake System、略称:ABS)とは、
急ブレーキや氷雪路面において、ブレーキをかけた場合タイヤがロックして滑り始めると、
ステアリング操作が効かなくなり制御不能となるばかりか、
前走車への追突や横滑り、横転などの重大事故の危険性がある。
これを防止するため、
ブレーキフルードの油圧制御を@加圧A保持B減圧を機械的に1秒間に数十回行いタイヤをロックさせる事なく、
制御可能とさせる装置である。
ABS車で急ブレーキを踏むと、ブレーキペダルにガッガッというペダルから跳ね返りがあるようなキックバックが発生します。
これはタイヤロック寸前で上記で述べた操作を繰り返されるからである。ブレーキペダルから足を離すとABSの機能が失われてしまう。 キックバックが発生しても、そのままブレーキを踏み続けて、ハンドル操作で危険回避する事が大切です。

ただし、ABSは万能ではなく、過信してはいけません。
@ アメリカの道路安全保険協会
「保険の支払額が、ABS装着したものと、しないもので全く 変わらない。」
Aアメリカの連邦道路交通安全局
「追突事故は減っているが、道路逸脱事故の増加がそれを 相殺し、死亡事故やそのほかの事故についても、ABSの効果は無」 B アメリカのある州の警察のパトロールカーの事例
「ABSを付けた車の方が事故が多い。」
Cヨーロッパの公的機関からの指摘
「雪道などでわずかながら効果が認められるものの、 事故は減るどころかむしろ増えている。」
(「運転管理」1997/4より)

   ■ 速度別制動距離(路面状況:ドライ)無の制動距離を100とする。※JAFユーザーテストより
速度
制動距離
制動倍率
30km/h
125
1.25倍
50km/h
86
0.86倍
80km/h
94
0.94倍


   ■ 速度別制動距離(路面状況:ウェット)無の制動距離を100とする。※JAFユーザーテストより
速度
制動距離
制動倍率
30km/h
102
1.02倍
50km/h
86
0.86倍
80km/h
87
0.87倍


   ■ 速度別制動距離(路面状況:スノー)無の制動距離を100とする。※JAFユーザーテストより
速度
制動距離
制動倍率
30km/h
85
0.85倍
50km/h
80
0.80倍
80km/h
89
0.89倍


   ■ 速度別制動距離(路面状況:砂利道)無の制動距離を100とする。※JAFユーザーテストより
速度
制動距離
制動倍率
30km/h
139
1.39倍
50km/h
119
1.19倍
80km/h
123
1.23倍


@ 低速走行では、ABS搭載車の方が制動距離が長くなる。
A 砂利道では車速に関係なくABS搭載車の方が制動距離が長くなる。

  ■ 低速時や砂利道等ではABS搭載車の方が制動距離が長くなるのか?
@ 砂利道や未舗装路、新雪の積もった道路
  ABS非装着車の場合、タイヤをロックさせながら砂利や新雪を押しのけて停止するため、
  砂利や砂、雪がタイヤの進行方向に集まり、大きな抵抗となるため、ABS装着車よりも制動距離が短くなる傾向。
  ABS装着車の場合、砂利などがタイヤを滑らす役目を果たし、ABS非装着車に比べ制動距離が伸びる傾向。
A 低速時の場合
  高速走行時において、ハンドル操作で危険回避行動をとると、少しのハンドル操作でも横転する可能性がある。
  そのため、高速走行時はまず車両を停止させる事を優先しなければなりません。
  よって、高速走行ではABS搭載車の方が制動距離が短くなるように設定されている。
  一方、低速走行においては車両が制御不能になる事は避けなければなりません。
  その事から、制動距離を犠牲にしてでもハンドル操作により車両を制御できるようにしている。
  つまり、低速走行では、ABS搭載車の方が制動距離が長くなる。
@ 制動距離を短くするものではないことを認識すること。
※ 悪路、砂利道、深い新雪などでは、制動距離が長くなることもある。
A 時速10キロ以下では作動しない。
B ABSが作動すると、フ゛レーキヘ゜タルに小刻みな反動があるが、ブレーキを踏み続けること。
C ABSを過信しないこと。
※ 「制動力の確保」・「車体姿勢の安定」・「ハンドル方向性の確保」という意識を持たないこと。